キングオブコント2014はシソンヌの優勝で幕を閉じた。
しかし、どうやらシソンヌに対して「つまらない」という意見も多いらしい。
そこに対して少し考えてみた。
■シソンヌのネタに台詞の面白さはないシソンヌのネタの最大の特徴は、面白い台詞がないことだと思う。
このように書いてしまうと誤解が生まれるかもしれないが、
要は面白さの種類の違いがそこにはある。
シソンヌのコントは「状況の面白さ」を切り取ったコントなのではないか。
2本目のネタが特にそうだが、あのコントの台詞を書き起こしてみたとしたら、
おそらく画期的なボケや、特徴的な言葉遣いなどはない。
2人は失恋した女性と、慰めるタクシードライバーというキャラの範囲でしか喋ってなく、
"お笑いお笑い"したツッコミの台詞や、奇をてらった大ボケなどもない。
それだからこそ、笑いの採点表があったとしたら、
「台詞」の点は0に近いと思う。
■審査員が芸人という意味「台詞」の面白さはほぼ0、それでも彼らが優勝したのはなぜだろうか。
それは審査員が芸人だったというところに大きなポイントがあるような気がしてならない。
あそこに審査員として座っている若手芸人は、ただの若手芸人ではない。
彼らもまたこのキングオブコントに出場し、惜しくも決勝進出を逃したれっきとした実力者なのである。
シソンヌのネタには「台詞」の面白さがないと書いたが、
一方で「状況」の面白さがあると僕には思う。
そして「世界観」とも表現される、その「状況」の面白さというのは、
簡単に作れるものではないのだと思う。
例えば台詞の面白さは「足し算」で作れる面白さだ。
ある状況下で最も面白い台詞が一つあり、その返しとしてまた面白い台詞が一つある。
一つ一つが面白さを持っていて、それが合わさって一本のネタの印象となる。
対して状況の面白さは決して「足し算」では作れない。
一つの台詞が大きな面白さを持っていない以上、
そのやりとりの膨らみだけがそのネタの印象となる。
一つの台詞を間違ってもネタの印象は大きく損なわれるだろうし、
それはまるで複雑に入り組んだパズルのような構成になっているのだろう。
これらを踏まえた上で、考えられるのは、
シソンヌのネタが芸人たちの「すげえ!」をより多く集めたということだ。
対戦相手のチョコレートプラネットのネタも確かに面白かった。
それ以前の3組を蹴散らすほど、インパクトもあったし、なにより笑いの量が大きかった。
しかし、シソンヌのネタはそれを超える、作り手からの「すげえ!」があったのではないか。
プロの芸人が認めるほどの「世界観」、それがシソンヌの最大の勝因ではないか。
■「台詞」なのか「状況」なのか個人的には従来のキングオブコントは「台詞」の勝負だったように思う。
審査員100名による採点方式で勝つには、大多数を納得させる「説得力」が必要だからだ。
過去の例を見ても、かもめんたるは一つ一つの台詞を研ぎ澄ましていたし、
バイきんぐの「なんて日だ!」は審査にトドメをさした。
今回で言えばラバーガールが「台詞」を研いできたコンビだったように思う。
彼らの口からも「優勝」という言葉が出ていたが、相当「優勝」を意識したネタだった。
ボケの大水さんのほぼ全ての台詞が、力強い「台詞」重視のボケだった。
しかし皮肉なことに、その「台詞」への迎合は
どこかでネタ全体のテンポを狂わせていたように思う。
「台詞」なのか「状況」なのか。
どちらがコンテストでは有利なのか、
また審査システムの変更がどう影響があったのかはわからない。
しかし今回は結果として、部分主義的な「台詞」ネタではなく、
全体主義的な「状況」ネタが優勝を奪っていった。
それは紛れもない事実であり、その事実が今後の芸人さんたちのネタ選びに影響する可能性はある。
■まとめとしてここまで、シソンヌの優勝を擁護するような内容を書いてきたが、
正直言って、僕はチョコレートプラネットに優勝して欲しかった。
この日に笑った順番としては、チョコプラの2本目、バンビーノの1本目、チョコプラの1本目の順。
チョコプラの2本目の「九条伸明」という「台詞」は、(台詞というか人の名前だけど)
個人的には大いに「説得力」を感じさせるものだった。
後からネットで「陣内のパクリ」という意見も見たが、
チョコプラのコントは「映像へのツッコミ芸」ではないし、
映像使ったネタが全部陣内のパクリになるのは、それはおかしいと思う。
シソンヌを面白いと思えない、そういう人もいるのかもしれないが、
そういう人は「台詞」の面白さを重視している人なのではないだろうか。
一方で、シソンヌは「状況」の面白さでキングになった。
それがこの評価の分かれの最大の要因のような気がする。
審査システムに対する否定的な意見もあったが、
個人的には一長一短かなと思う。
10組から5組に絞るのは一騎打ちで、そこからは点数とかもいいかと思うが、
それはそれで複雑になるのでなんとも言えないところ。
それよりはその審査システムがどのように結果に影響して、
その上で何が起こっていたのかを考える方がよっぽど楽しい。
ここに書いたことも誰かにとって共感されても、誰かにとっては反感を買うかもしれない。
でもそれがお笑いだし、それが面白い。
昨日のコントも、そうだったのだと思う。