2013年03月07日

「ロスタイムに奇跡を 日本代表選手たちの真実」の感想

ロスタイムに奇跡を 日本代表選手たちの真実 (角川文庫)
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これ、すごい良かった。
内容としては本田圭佑や長友佑都といった日本代表のメンバーについて、
8人の選手をひとりひとり取り上げたコラムエッセイのような形。

インタビューではないんだけど、完全なコラムでもない。
筆者の主観でみた選手像と、それを裏付けるような選手自身の言葉によって、
それぞれの選手がどのような人間なのか、
そして何を考えてサッカーに向かっているのかがとてもよく伝わってきます。

中でも特にぼくが好きなのは大久保嘉人の章です。
そもそも大久保嘉人の章だけ他の選手の倍以上のページ数なのですが、
それはおそらく筆者が過去に大久保嘉人の選手本を出しているからですかね。

やっぱりメディアで聞くような熱い男だということと、
一方で自分を他人に見せないようなシャイな一面もあること。
そんな大久保嘉人が南アフリカW杯を戦う上で、
チームのためにした進言と、その内情。
「ああ、中の選手たちはそんな風に思ってたんだなあ」
と今になって知ることができてよかったです。

サッカー選手ってピッチの上のプレイだけがその選手の印象になりがちですけど、
選手だって一人の人間であることも事実。
こうやってサッカー選手の"人間"の部分にスポットを当てる記事は、
新鮮でかつ「もっと知りたいなあ」と思う部分でしたね。

筆者の小宮良之さんは「アンチドロップアウト」っていう
戦力外になった選手たちを取り上げた作品も読んだことありましたけど、
それもテーマもあいまって"人間"が出ていて凄く良かった印象があります。

"人間"としての"サッカー選手"。
今後サッカー選手を見る目が変わるかもしれません。




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2013年02月04日

『エデン』の感想



◆前作「サクリファイス」

前作「サクリファイス」は間違いなく名作でした。
自転車レースのプロチーム、そこに属する"アシスト"役の主人公。
"エース"のために自らの成績を犠牲にするその生き様は、
まさしく"生贄(サクリファイス)"そのもの。
しかしレース中に起きたある事件とともに物語は加速していき、
そして全てを読み終えてその本を静かに閉じたとき、
タイトル「サクリファイス」の本当の意味が解かる。
ぼくにとっては人生のベスト級の作品です。

◆ミステリー作品としてではなく

「エデン」は主人公がヨーロッパのチームに移籍した、
その後を描いた続編です。
この「エデン」に関しても「サクリファイス」と同じで、
単なる自転車レースだけを描くのではなく
その裏にミステリーの要素を取り入れた作品ではあります。

ただ誤解を恐れずに言えば、
「エデン」は実のところそれほど何かが起きたというわけではありません。
ミステリー要素としてドーピングの話があるものの、
「サクリファイス」で受けた衝撃には遠く及ばないのが正直な感想です。

ただ、だからといってこの作品が1作目から
スケールダウンした駄作かと言ったらそうではない。

「サクリファイス」は言ってしまえば自転車レースという土台の上で、
ミステリーの事件を扱った、言わばミステリー作品です。
では「エデン」はどうか。
こちらは作品を通してツール・ド・フランスというレースを追い、
そしてそのレースの中で、選手としての生き様を描いた作品。
つまりはスポーツ作品なんですよね。

◆何かが起こる必要はない

とは言っても、「エデン」はクライマックスで急に物語が失速します。
主人公は自分の勝利を目指せたにも関わらず、それを放棄するし、
最後の勝負の日はある事件が理由で流れてしまいます。
言ってしまえばこの物語は何も残らない物語なんです。

でも、実はそれでいいのだと、ぼくは思います。
主人公の白石誓は前出の通り、チームの"アシスト"役。
彼はその仕事にやりがいを感じ、誇りを持っています。
山岳レースで、彼が震えるほどの名誉を感じたステージ優勝を
それでも放棄したのは、彼が最後まで"アシスト"という役割に徹したからです。

彼は勝利を放棄したその試合でこんなやりとりを交わします。

「でも、歴史に残るのは君の名じゃない」
「ああ、知ってる」


これが彼の選んだ"アシスト"という生き方です。
"アシスト"はレースの最後にはその姿を消しています。
なぜなら"エース"を引っ張って引っ張って。
そして最後に自らは力尽きていくからです。

この作品「エデン」は"アシスト"という役割を観ているかのような作品です。
全編を通して、それは一つの壮大な話にも出きたはず。
最後のレースはクライマックスを描けたはずですし、
ドーピングの件はさらに大きな話にできたはずです。
しかしそれは主人公が自らの勝利を放棄したのと同じように、
全ては放棄されていくのです。
なぜならそれが"アシスト"という生き様だから。
最後に自分が勝つ必要なんてないのだから。

◆「エデン」とは

物語のラストはこの一文で終わります。

叩きのめされたとしても楽園は楽園で、
そこにいられること、そのことが至福なのだ。


結末が如何様でも、それが大きな問題ではなくて。
ただそこにある物語を読んでいた時間が有意義ならば、
それは十分に意義を果たしている。
そんなことをぼくはこの「エデン」を読んで、
感じ想いました。





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2013年01月20日

「サブカルで食う」の感想 〜サブカル特有の「来いよ!」感〜

サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法
サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法


大槻ケンヂさんの新書。
内容はというと、作者本人が何をどうやってきたかと。
自らが"サブカルの人"として、どういうことを考えてやってきたのかという、ある意味でのHowto本ですね。

ぼくが一番面白かったのは、巻末の宇多丸さんとの対談です。
この2人の「若いサブカルはなってねえ!」っていう話が面白くて。
特に気になったのは若い人の"勉強不足"に対しての文句。

大槻「そう、どこかで遮断されたの。映画にしろ音楽にしろ、好きなジャンルがあったら過去にさかのぼって歴史をたどるっていう文化が綿々とあったはずなんだけど、それがどこかのタイミングで『今、面白ければいいじゃないですか』になっちゃった」


まあこんな感じで若い"サブカル"な人らに対して苦言を吐いてるわけだけれども、そこで思うのは、やっぱりサブカルの人間ってどこかで"勝ち負け"を意識してるよねっていう。

もともとはクラスでモテないやつらが、
「おれたちは"奴ら(クラスの人気者)"とは違う」
的な感情で、映画やら音楽の知識を蓄えに行って、それが"サブカル"っていうシーンになっていった感じだけども。

今は本書でも触れてる通り、イケメンとかオシャレな奴らが"こっち"に入ってきて新しい"サブカル"を作っちゃった。
それに対して大槻ケンヂさんや宇多丸さんの「なってねえ!」っていうのは、やっぱり"勝ち負け"の部分がどこかにあるからで。
だってイケメンとかオシャレな奴らは映画とか音楽とか小説の知識で誰かに勝とうと思ってないもんね。
「今、面白ければいい」のも、「自分」が面白ければいいからであって、「他人より自分の方が面白がってる」とか、「誰よりも自分がこれを愛してる」とか考えてないからそうなるのかなと。

そんで、たぶんそれが更に"サブカル"の人間をイライラさせていて。
"サブカル"からしたら「来いよ!」って感じなのに、オシャレな方はこっちを相手にしていない。
オシャレな方は「自分が楽しむものでは・・?」って思ってるから、相手を打ち負かそうとか思ってなさそうですもんね。
だからそこに対して大槻ケンヂさんや宇多丸さんは、"サブカル"なら「来いよ!」って思ってなきゃダメで、思うなら思うで「それなりにやれよ!」っていうことなのかなと思います。

個人的にぼくも「来いよ!」って言いながら、誰と戦ってるのか分からないような状況なんですけども。
とりあえずもっと「それなりにやろう」かなと思いました。



サブカル・スーパースター鬱伝サブカル・スーパースター鬱伝
吉田 豪

人間コク宝 まんが道 電池以下 新・人間コク宝 続・人間コク宝 藝人春秋

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2012年12月29日

"HUNTER×HUNTER 32巻"の感想 〜冨樫義博=ジン・フリークス説〜

いやー、ハンターハンター面白いねー。
ゴン、選挙、キルアとアルカ。
どうなるのかなあと思っていたけど、
ぜんぶ上手いこと完結しましたね。

でも、思うんですよね。
今回の"選挙編"について、作者はどの程度まで考えていたのかって。
まあたぶんですけど、ぼくは作者は終わりまで考えてないなと思うんです。
あったのは「選挙とか面白くね?」っていうのだけ。
こうしてこうしてこうなってこうなるってなかっただろうと。
たぶんそのときそのときで「こうなったら面白くね?」っていう。
つまりはただ「楽しみたい」だけなんじゃねーかと。

「楽しむ」
これは今回の32巻に頻発する台詞でもあります。

「アイツはただ楽しみたいんだ
 オレや会長といっしょだよ
 …ま、おれは飽きっぽいけどな」


「オレはまだこの中の一つも手に入れてない
 だが別に急いでいない
 道中を楽しんでる最中だ
 だからもし
 お前の行き先が将来のオレと重なるなら
 道草を楽しめ 大いにな」


これはどちらもジンの台詞です。
ぼくは作者の冨樫義博もこの考えで物語を創っているように思えてなりません。
選挙編に出てくる象徴的なキャラクター、パリストン。
彼は最後に「会長になりたくて副会長になったわけじゃない」と
会長職を辞任するわけですが、
これももともと用意されていた終わりではないと思うんですよね。
楽しんで、楽しんで、そんで最後は辻褄を合わせて終わらせる。
ジンはこんなことも言っています。

「念願かなって王墓の中に足を踏み入れた時
 一番嬉しかったのは
 ずっと願っていた王墓の「真実」を目の当たりにしたことじゃなく
 いっしょに中へ入った連中と顔を見合わせて
 握手した瞬間だった

 そいつらは今も無償で役員をしながら
 オレに生きた情報をくれる
 この連中に比べたら王墓の「真実」はただのおまけさ」


物語は往々にして、終わり方を求めるものであります。
話を広げていって、その広げ方がどんなに良かろうと
その最後が悪ければ批判されるものでもあります。
しかし、作者はおそらく終わりを求めていない。
そんなのただの「おまけ」だと思っています。
"蟻編"なんてその最たる例で、
ぼくはあれを「飽きたから辞めた」と思っています。

もう一つ、話を展開させたいと思います。
作者がジンなのであれば、ゴンは何なのでしょう。
ぼくはこう考えます。
ゴンはジンの息子、つまりは作者の息子である存在は何か。
それはハンターハンターという作品かなと。

作中、こんなシーンがあります。
ゴンがジンに会って、ジンが無愛想な反応をすることに、
周りのハンターから総バッシングを受けます。
「それでも父親かよ!」
「これからちゃんと父親しますって約束しろ!」
「えらそーに父親ヅラすんなコラ!」
これらの台詞、全て「父親」を「作者」に変えても成り立つように思うのです。



まあそんなこんなで、32巻はまたすげー面白い巻だったんですけど、
あの途中の無声漫画みたいなやつ。
あれは「最終回」を匂わせるっていうギャグですよね、たぶん。
いやー、面白いわ。
大好きですね。



HUNTER×HUNTER 32 (ジャンプコミックス)HUNTER×HUNTER 32 (ジャンプコミックス)
冨樫 義博

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2012年11月04日

『SRサイタマノラッパー』の感想

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『サイタマノラッパー』の小説版を読みました。
いつだったか、ビレッジバンガードで初版がサイン入りで売ってて。
なんか勢いで買ってしまいました。
なので僕の文庫には入江悠監督とIKKU役の駒木根隆介さんのサインが入ってます。

そもそもこの作品は映画が先にあって、
その映画『SRサイタマノラッパー』っていうのが
RHYMESTER宇多丸さんのラジオで大絶賛だったんですよね。
ただ、個人的にはまあまあで。
詳しくは下記を。

"SRサイタマノラッパー"の感想 〜そのあるあるはあるあるか〜: 市村の感想


そんなこんなで読み始めた小説版。
基本的には映画の出来事以上の描写はありませんでしたね。
あるとすれば釣りの先輩が大会で優勝してる的な情報くらいですか。
あとは映画にあった出来事を小説にしてみましたよって感じ。

読んでいて目立つのは、文章の粗さというか、拙さというか。
言ってしまえばあまり文章が上手くないのかなと。

でもよく考えると、小説は主人公の一人称で語られてるんですよ。
ってことは全部描写を説明してるのはIKKUなんですよね。
そう考えるとあれで正解だったというか。
逆にそれが改めてIKKUのダメさを表しているようで。
ああ、なるほどなーと思いました。


それにしても映画は大絶賛ですよね。
『サイタマノラッパー2』とか観るべきなんですかね。
入江悠監督の『タマフルザ・ムービー』は酷かったけどね。




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posted by 市村 at 23:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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