2011年07月16日

"ゲド戦記"の感想 〜「ジブリの言語化」という錯覚の正体〜

地上波でゲド戦記やっていましたね。
というわけで感想です。

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『ゲド戦記』と聞いて思い出すのは、
公開当時の批判の嵐です。
「つまらない」
「クソ映画」
などの言葉があちらこちらで聞かれ、
すっかり"ジブリの汚点"と化してしまった。
そんな世間の声が溢れていたように思います。

しかし、ぼくはそんな中で思いました。
「え、そこまで悪かった?」
"世紀の大傑作"とまでは行かなくても、
観る価値がないクソ映画とはぼくには思えず。
特に作中のセリフは僕にとってとても納得がいき、
そこまで批判される理由というのが、
理解できませんでした。

当時ぼくがこの映画に対して当てはめた結論というのが、
「今までのジブリを言葉にした映画」
というものでした。

映画というのものはあるメッセージを、
ストーリーとして、演技として、
伝えるべきものだとぼくは思います。
その点で、それらをすべてセリフで言ってしまうという、
この映画は映画としては評価できないのも分かります。

しかしこの映画内で語られるそのセリフは、
決して無視してはいけないようなものだと感じました。
例えば「真の名」や「闇があるから光がある」のような考え方。
これらはそもそもジブリがずっと言ってきたこと、
ひいては宮崎駿の真に伝えたいメッセージのように思えたからです。

そういう意味で、確かに映画として評価が高くないことは理解できても、
この映画を批判することは、
今までのジブリを否定することと同じことなのではないか。
ぼくにはそう思えてならず、
それゆえの「そこまで悪くない」という結論に至っていたのです。


そして先日、地上波で『ゲド戦記』を再び観たときに、
ぼくはひとつの仮説に行き着きました。
それは「ぼくが評価していた点は映画の持ち物ではない」
ということでした。

『ゲド戦記』にはご存知のとおり原作があります。
そしてその原作をAmazonで検索すると、
それは素晴らしいほどの賞賛のレビューが目に入ります。

同時に思い返して見れば、
宮崎駿はこの原作の大ファンなんですよね。
そう考えると、ぼくが『ゲド戦記』に抱いていた、
「今までのジブリを言葉にした映画」
というのはおそらく間違いで。
正確には、
「原作『ゲド戦記』が言葉にしていた部分を、
 映画として再構築していたのがジブリだった」と。
こういうことなんじゃないかと、ぼくは思ったのです。

つまりは宮崎吾朗が今までのジブリを翻訳したような、
そんなセリフを映画で使っていたわけでなく。
オリジナルのセリフを使っていたら、
そのオリジナルに影響された宮崎駿の影がちらつくことになった。
それがぼくが抱いた「ジブリの言語化」という錯覚の正体で、
言い換えればジブリのほうが「ゲドの再構築化」だったんだと、
ぼくには思いました。


そう考えると、なんというか奇跡的なものを感じてしまいますよね。
ゲドに影響された宮崎駿を、仮に"ゲドの子供"だと考えれば、
そのゲドを映画化したのは"実の子ども"の宮崎吾朗なのですから。
確かに映画としては評価すべきものではないとぼくも思いますけど、
この親子の物語を含めて考えると、
けっこう面白い話だと、思ってしまいますね。

というわけで、原作がすごく読みたくなった。




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posted by 市村 at 14:24 | TrackBack(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月17日

"映画「クラシコ」"の感想 〜未完成はつまりまだ終わらずを示す〜

お久しぶりです。
社会人になりまして、ブログがあまり更新できていません。
なんとか頑張っていきたいですね。
というわけで「クラシコ」の感想です。

c01.jpg

もともと「クラシコ」と言えば、
スペインのレアル・マドリーとバルセロナをイメージするのが普通でしょう。
今回一緒に観に行ったぼくの弟も、
はじめはそちらを題材にした映画だと思っていたそうです。
しかし、この映画で取り上げられるのは、
レアルやバルサでもなく、ましてやプロのチームでもありません。
これは日本の、それも地域リーグに所属する2チームの映画なのです。

この映画はもちろんサッカーを取り上げた映画ですし、
"サッカー映画"と呼ぶことのできる映画でしょう。
しかし実際にサッカーをしているシーンというのはかなり少ないことに気づきます。
試合のシーンもわずかで、そのほとんどがサポーターやらスタッフやらの話。
実はこれがとても重要なことのような気がするんですよね。

ぼくがよく友だちに言うんですけど、
「サッカー観戦の楽しさの半分はサッカー以外のところにある」
と、ぼくはこう思うんですね。
サッカー以外、つまりは試合以外の部分で、
例えばスタジアムの雰囲気だったり、サポーターの様子だったり。
楽しさの半分というと大げさかもしれませんが、
TVで観るサッカーとスタジアムで観るサッカーは明確に違います。
それは他でもない"サッカー以外"の部分が大きく影響してると思うのです。

テレビのサッカー中継はもちろん試合を映します。
そこに"サッカー以外"の部分は映されません。
でも実際に行われているスタジアムにはサポーターがいて、
その雰囲気が、その熱気が、その臨場感が、確かにそこには存在しているのです。
言ってしまえばこの映画はTV中継が排除した、
"そちら"を切り取った映画だと、ぼくはそう感じました。


この映画を映画としてみると、まあいろいろな弱点はあるなぁとは思います。
例えばリーグ戦でついに決着がつかなかったこの2チームが、
最後の希望である社会人選手権でぶつかる。
これこそ最高のドラマであり、最高のクライマックスじゃないかと思いました。
しかし、映画では試合の結果を伝えて終了。
なんともあっさりした触れ方でした。

これに関して文句を言う方もいるでしょうし、
完成度の面を批判する方もいるでしょう。
でも、あえてポジティブに考えると、
"完成させない"ことにも価値があるような気もするんですよね。

映画が一つの物語だとして、
今回は長野県のライバルチームを取り上げた物語になったわけです。
これを製作者が映画の方法論で物語を装飾し、
一つの作品として終わらせることもできるはずです。
しかし映画が終わろうとも、この「クラシコ」は終わりません。
この2チームはこれからもライバルとして、戦い続ける。
そう考えると、あえて物語を結ばないという手法は、
ぼくは間違いだとも思えないのです。


映画の中で、松本サポーターの青年が、
「FC東京を応援してたんですけど、どこかで応援しきれなくて・・・」
と言うシーンがあります。
この言葉は本当によく分かります。
昔から横浜マリノスが好きで、応援していたのですが、地元は栃木県。
その"ロケーションギャップ"に違和感を感じていました。
しかし2008年、栃木SCがJ2昇格を果たし、
ついに地元にプロチームが生まれることとなりました。
今ではマリノスは好きなチーム、栃木SCはおれたちのチーム。
そんな風に考えています。
言ってしまえば栃木に関しては「好き」とかそういうのでさえないんですよね。
もうそれは「身内」であり、「自分」なんですよね。
その感覚を、この映画から少しでも感じることができたのならば、
一人のサッカーファンとしてすごく嬉しい気持ちです。
素晴らしい映画でした。



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タグ:クラシコ
posted by 市村 at 13:12 | Comment(3) | TrackBack(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月27日

"イノセンス"の感想 〜人間と心〜

押井守監督のイノセンスを観ました。

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押井守監督のアニメに関してはバラバラに観ていて。
攻殻機動隊やそれこそスカイ・クロラなんかは観たことがあったのですが、
うる星やつらやパトレイバー、そしてこのイノセンスは未見。
そんな中で「イノセンスは是非観たほうがいい」とのことだったので、観てみました。

観た感想としては、圧倒的な世界観と緻密なアニメーションに感動を覚えた、
というのが正しいのかもしれませんが、
それ以上に、言葉に落とすことのできない、
何か大きな衝撃のようなものを体で感じとったような、そんな感覚を覚えました。

ぼくがこれを観て思ったこと。
それは「生の定義」という言葉です。
この世界では"電脳"そして"義体"という、科学技術によって改造された人間が登場します。
体の一部を機械に変えている人間もいれば、
それこそ脳以外のすべてのパーツを機械化している人間もいる。
喩え話として「今、右手を切り落としたとしたら、この右手は自分なのだろうか」
という話がありますが、それこそ自分とは何かを感じさせるような世界がここに描かれています。

自分の中の"人間"の部分と"機械"の部分が曖昧になっていくにつれて、
自分と、そうでないものの境界も曖昧になっていく。
そしてそれは"生"と"死"の境界さえも曖昧にしてしまうような。
そんなことが、この世界では当たり前のようになっているのです。

またこの世界の人間の脳はネットにアクセスできるようになっています。
それゆえ、他者の情報を直接脳で受け取れるために、
それが自分の得た情報なのか、他人から受け取った情報なのか、
その境界も曖昧になっていきます。
"記憶"と"記録"。
その二つの区分線が見えなくなってしまったとき、
"現実"と"夢"、睡眠によって遮断された二つの世界が交わってしまうかのように。
自分という人間を担保するものがない不安が、そこには存在してしまうのです。

機械化していく人間の背景には、
利便性や機能性の追求があるのだろうと、ぼくは思います。
それこそ"生きていく"中で、より良く生きるために技術は進歩してきた。
つまり、人がより生を求めていった結果が、
同時に"生"の境界を曖昧にしてしまったと。
この映画からはそういうメッセージも感じさせます。

この映画で象徴的に語られるのが、「人間」と「人形」という対比です。
人間の一部を改造することと同時に、この世界では完全な人型の機械、
つまりは「人形」が存在しています。
人形を、"人間"という"機能"を持った機械だと定義したときに、
果たして人形は人間に到達できるのか。
また人間が機械化によってますます"機能"になっていったときに、
それは人形となにが違うのか。
そんな問題に対する解答が、「ゴースト」という言葉なのだと思います。

バトーによれば、前作「攻殻機動隊」の主人公の草薙素子は、
「脳みそとゴーストだけがやつの持ち物」だそうです。
脳みそは分かるのですが、では果たしてゴーストとは何か。
ぼくはこれこそが"心"と呼ぶべきものなんじゃないかと思うのです。

爆問学問である教授がこう言っていました。
「心とは、自分の中の定義できるものを引いていったときに、最後に残るもの」
つまりはそれが押井守の言う「ゴースト」という言葉なのではないかと。
機能化する人間、そして人間化する人形の、
「人間ー人形=X」という式の、Xに当てはまる解が「ゴースト」なのではないかと。
たとえこの先、人形がどれだけ忠実に人間化していったとしても、
そこには「ゴースト」という圧倒的な"差"が存在するのではないかと。

そして物語終盤で登場する草薙素子。
彼女は一体の人形に自分の一部をロードして、そこに登場します。
草薙素子はネットの中に生きる存在として登場しますが、
体も無ければ脳みそもない、では彼女は何なのか。
ぼくは彼女こそ「ゴースト」だと、思わざるをえません。
彼女は"実体"を持ちません。
まるで浮遊するかのようにネットの中に存在する彼女を形作るのは何か。
それがゴースト、つまりは"心"なんだと。

これから先、技術はどんどん発達するでしょう。
その中でこのような世界が訪れる日も遠くないかもしれません。
そういう意味でこれが「ありもしない問題」だとは決して思えません。
その中で、人間が人間であるために必要なもの。
それが"心"なんだと。
そういう意味で"心"の部分だけは決して失ってはいけないように、ぼくには思えました。



スカイ・クロラ
市村の感想: "スカイクロラ"の感想 


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posted by 市村 at 16:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月09日

「しんぼる」を映画から観るか、お笑いから観るか 〜前フリ〜

先日、松本人志監督の映画「しんぼる」について感想を書きました。

市村の感想: "映画「しんぼる」の感想" 〜しんぼるが変える運命〜

ぼくは自分で感想を書くまで、その作品の評価などは見ないようにしているのですが、
ブログ更新後、Amazonのレビューを見ても、賛否両論。
「面白い」という意見もあれば、「最低の映画」という評価もありました。

そんな中で、この映画について語ってる二つの番組があります。
一つはライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル
そしてもう一つが東京ポッド許可局です。

番組の説明をすると、
ウィークエンド・シャッフルは、TBSラジオで放送されている番組。
HIPHOPグループ、ライムスターの宇多丸をパーソナリティとして、
音楽や映画など様々な文化やジャンルに対して独自の視点から特集するトーク番組。
「しんぼる」が語られたのは、「シネマハスラー」という映画評論コーナーで、
「シネマハスラー」の映画評は本にもなっています。

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また、一方の東京ポッド許可局は、
インターネットで配信されているポッドキャストで、
マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの三人のお笑い芸人によるトーク番組。
「文系芸人が行間を読む」というキャッチコピーがついたように、
お笑いについてインサイダーの視点から語っていく番組で、
こちらも番組が書籍化しています。

東京ポッド許可局 〜文系芸人が行間を、裏を、未来を読む〜
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ここまでで2つの番組を紹介したのですが、
この2つの番組が「しんぼる」について全く違う評価をしていてすごく面白いのです。
そしてそれは「しんぼる」だったからこそ起きた現象であり、
そういう意味でもこの作品の持つ"シズル感"と言いますか、
"語りたくなる"要素はすごいなぁと思わされるのです。


というわけで、どのように「しんぼる」を語ったかを紹介していこうと思うのですが、
ちょっと前フリが長くなってしまったので、ここで一回記事を切ります。
次回、どのように「しんぼる」を語ったかを紹介していきます。



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東京ポッド許可局 〜文系芸人が行間を、裏を、未来を読む〜東京ポッド許可局 〜文系芸人が行間を、裏を、未来を読む〜
マキタスポーツ プチ鹿島 サンキュータツオ みち みずしな孝之

キッドのもと オトネタ M-1戦国史 (メディアファクトリー新書) 松嶋×町山 未公開映画を観る本 クマと闘ったヒト (MF文庫ダ・ヴィンチ)

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posted by 市村 at 17:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月05日

"時をかける少女"の感想 〜妄想の仮定〜

他のブログに前に書いたやつを再投稿。

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先週のライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルのゲストは細田守監督だった。番組では、彼の最新作である「サマーウォーズ」について話していたのだが、それがとても面白そうだったので、彼の過去の作品を観ることにした。とりあえず借りてきたのは「時をかける少女」と「ワンピース〜オマツリ男爵と秘密の島〜」。ワンピースをやっていたことは少し驚いたけど、とりあえず細田監督が名を上げた代表作とも言える「時をかける少女」から先に観てみた。

「時をかける少女」という作品は、元々は筒井康隆の小説なんだけど、どこかでこの名前の映画か何かを観たような記憶がある。調べたら、1983年に映画化されている。だけど、おれそんなの観てないよ。と、思ったら、モーニング娘が主演でドラマ化してたのを観たんだってことを思い出した。そうだ。なっちが主役だったんだ。当時はなっち好きだったなぁ。

そんなこんなで「時をかける少女」。いや、もう単純に面白かったです。98分っていう時間もよかったと思うんだけど、最初から最後までだれることなくエンディングまで突っ走ってくれた。ストーリーは本当に気持ちいいくらいに“起承転結”って感じで。“タイムリープ”で時間軸は行ったり来たりするんだけど、今何が起こってるのかも分かりづらくない。ラストに行くまでの加速力も良かったし、そのラストも清々しい終わり方で、テーマの行き先もきれいに解決していた。

この映画を観て、「なっちが出てたやつと話違うな」と思ってたら、これって原作の20年後っていう設定なのね。そしてあの美術館のおばさんが当時の主人公で。だから「私も“タイムリープ”したことある」って言ってたんだけど、あれって彼女が本当にタイムリープしてたからそう言ったわけじゃないと思うんだよね。彼女がそれについて少し冗談っぽく「日曜日にやることがなくてどうしようと思ってたら夜になってた」って言って真琴に「真剣に話してるのに」って言われるんだけど、結局それもやっぱりタイムリープの一種なんだと思って。この映画ってSF的な設定が使われてるから“非日常”の話だと考えがちだけど、僕は十分これは“日常”によくある話だと考えられる思う。

この映画って真琴の妄想の話だと考えても成立すると思うんだ。最後に未来人である千明は、突然外国に留学するっていう理由で姿を消す。このとき功介が「あいつ真琴にも何も言わないで…!」って言ってるんだけど、本当はこっちが現実に起こったことって考えることができると思うの。つまり好きだった千明に何も言われないまま姿を消されて。その逃避として「千明は未来人だった」っていう設定を自分で考えたっていうこと。いや、まあそれはひねくれた考え方かもしれないけどさ。ここで大切なのは「そう考えることもできる」っていうところで。つまり“タイムリープ”ってそんなもんなんだ。“選択されない未来”を作る点では妄想と同じなんだって。そう考えるとやっぱりこの物語は “日常”に落とし込むことができる作品だと思うわけ。つまり「あのとき、ああしとけばよかった」って思うことの一つの答えとして。

主人公の真琴は最初にこう思う。「こんなことなら今日もっと早く起きればよかった」。これは不運な出来事が続いた7月13日に、「そもそも朝寝坊したのが悪かった」と思って言う言葉なんだけど、この「あのとき、ああしとけばよかった」っていうのは誰もが思うことだと思う。特に高校生なんかは想像力とかのところで、大人に比べてそう思うことが多いんじゃないかな。それが“タイムリープ”を使うことで、真琴は「ああしとけば」が実際にできるようになる。だけどその変更後の世界が素晴らしい世界かって言ったらそうじゃなくて。自分が良い目を見てる一方で悪い目を見る人の存在に気づく。それで結局は「散々変更しまくった世界」よりももっと前に戻ることで「何も変わってない世界」に生きることを選ぶ。

ラストに千明に“タイムリープ”の装置を渡す直前に、功介にこんなことを言われる。

「真琴、前向いて走れよ!」

つまり今までずっと“タイムリープ”っていう力で“後ろ”を見てきた真琴が、物語の最後で前を向く。そこにはもう“タイムリープ”は無くて、過去に戻ることはできない。それでも真琴は「前を向いて走る」のだ。過ぎ去った過去は過去でしかなく、触ることなんてできない。真琴は物語の中でそのように成長し、そして映画はナナメ上の空を見上げた真琴を映して終わる。

ストーリーはストーリーでとても良いのだが、映画としてみてもこの作品はとても良い。“分かれ道”を表した道路標識や、二重の意味を持った台詞なんかはとくに良い。ラストに繋がる最後のタイムリープのところは涙が出そうになった。いやー、この映画を撮った細田監督の「サマーウォーズ」は期待できるんじゃないのかな。うん、楽しみ。





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