2010年11月27日

"3月のライオン5巻"の感想 〜強さの孤独〜

さあ、ついに発売されました。
『3月のライオン』の5巻。
作者の羽海野チカさんと言えば、
"『ハチミツとクローバー』の作者"であったけど、
これが"『3月のライオン』の作者"に成る日は近い、
いや、もう成っているのかもしれない。

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)
羽海野 チカ

白泉社 2010-11-26
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


さあ、読者にとってこの本の"読書"は本を手に取るときから始まっています。
表紙に描かれた幼少児の桐山零。
その一人佇み、遠くを眺めている姿。
それこそがこの5巻の"入り口"であり、"象徴"に他なりません。
"孤独"。
それが今巻のテーマであり、ひいては『3月のライオン』が内包していた大テーマでもあります。

まず、この巻の冒頭で語られるのは師匠である島田八段の故郷のエピソードです。
孤立する老人のために将棋クラブを作り、
そしてその故郷の方々に愛されている島田八段の姿。
それを桐山は目にします。

一方で高校2年生になった桐山の日常には、
相変わらず、まるで沈殿しているかのような孤独が足元に存在していました。
そもそも彼の孤独は急に現れたものではありません。
幼少期からクラスに馴染めず、ただひたすら将棋にのめり込んでいた桐山。
孤独を紛らわすために将棋を指し、将棋を指すために一層孤独になる。
そして皮肉にも孤独になればなるほど、その孤独が彼を強くしました。

さて、『3月のライオン』で一貫として語られていたのは、"勝負の世界"です。
そこに居る二者を勝ち負けで二分し、そしてそれを半永久的に続ける世界。
それが桐山零の身を置く"勝負の世界"なのです。

桐山は作中で自分をこう表します。

休みは全て将棋会館や、父の紹介の将棋道場で
朝から晩まで対局をした。

指して、指して、指して、指して、指して、指して、指し続けて、指して、指して。

そうして僕は、
今、ここにいる

きっと、強さとは孤独のことで、
そこはすごい寂しくて、寒くて、そして怖いところなのでしょう。
でも、それでも彼らは"勝ち"が欲しくて、
それでも彼らは"負け"が悔しくて。
それでも彼らは、その"強さ"という孤独な場所を求めるのでしょう。
それが、"勝負"で。
そしてそれが、"人生"なのでしょう。

この巻の最後、ひなたちゃんがクラスでイジメられてしまい、こう言うのです。
ひとりぼっちになるの、こわいよう…
ほんとはずっと恐かった。
でもっっ
でもっっ、

後悔なんてしないっっ
しちゃダメだっ
だって、
私のした事は、
ぜったい

まちがってなんか
いない!!

強さだけが求められる世界、
勝利だけが勝ちのある世界、
そんな桐山が勝って、なお足踏みしていた彼のある種"仕方のない強さ"。
これはそんな彼を全肯定する言葉ですよね。

ひなたちゃんは「孤独は恐い、でも後悔はしない」と言うわけです。
まちがってなんかいないから
今まで孤独にならざるを得なかった桐山にとって、
これは圧倒的な"救い"なんですよね。

同時に、僕はこうも思いました。
この人、羽海野チカさんは、なんでこんな絵が描けるんだろうと。
恐く、悲しく、しかし同時に強く、優しい。
そんな絵をどうして描くことができるのだろう、と。
この絵を見て、僕は自然に涙がこぼれてきました。
僕は、生まれて初めて、絵に泣いたのかもしれません。





LHFポッドキャストもよろしく!
lhfpote.JPG

twitterやってます市村 (ichimura_LHF) on Twitter

LHFが編集長のブログ!
月刊LHFGONDOLA

クリックお願いします。
目指せ月間1万5000PV!!
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村






posted by 市村 at 03:22 | Comment(2) | TrackBack(0) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
表紙の桐山君がかかえている本は伊藤看寿の将棋図巧です。200年前のつめ将棋の本ですがすくなくとも150年間最高峰だったつめ将棋です。、先人とつながり孤独とおもっていても実はいろいろなひとにささえられているのがこの表紙からもよみとれます。
 これを小学生でみることができるの相当めぐまれた環境です。いまは平凡社からでている本やアマゾンがありますが。
Posted by madi at 2010年11月27日 05:15
madiさん、コメントありがとうございます。
霧山くんの本にまでこだわりが隠されていたんですね。。。
僕は将棋をよく分かっていないのですが、将棋に詳しい人から見ても楽しめる作品なのでしょうね。
素晴らしい作品です。
Posted by 市村 at 2010年11月27日 05:46
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。